災害関連死を防ぐために必要な「生きる防災」とは?

災害時に命を守るための避難はもちろん重要ですが、それだけでは十分ではありません。
災害後の被災生活で健康を維持し、生き延びる力を保つことが必要不可欠です。
実は、多くの災害犠牲者が、被災生活中に体調を崩したり、持病が悪化することで命を落としているのです。
このような間接的な死因を「災害関連死」と呼びます。

災害関連死とは?その現実を知る

災害関連死とは、直接的な被害ではなく、被災生活での体調悪化や精神的なストレスが引き金となり、
命を落とすケースを指します。
具体的には以下のような状況が挙げられます

◇エコノミークラス症候群:避難所や車中泊で長時間同じ姿勢で過ごしたことによる血栓症。
◇持病の悪化:慢性疾患(糖尿病や高血圧など)のコントロール不全。
◇被災生活の疲労:過労や十分な栄養が摂取できない生活環境。
◇精神的な負担:避難所生活の孤独やストレスによる自殺など。

これらは防ぐことが可能な「助けられる命」だったかもしれません。

熊本地震に見る災害関連死の現実

平成28年に発生した熊本地震では、災害による直接死よりも災害関連死が4倍以上にのぼりました。
避難所での生活や車中泊を余儀なくされた人々、被災直後に入院中の治療が困難になった人々が多く含まれています。このような現実から、「生き延びる力」を高める防災の重要性が浮き彫りになりました。

災害関連死を防ぐための日頃の備えとは?

1. 免疫力を高める食生活を心がける

バランスの良い食事は健康の基盤です。普段から雑穀や野菜、発酵食品(味噌や納豆など)を取り入れることで、免疫力を高めましょう。特に災害時には普段の食事スタイルがそのまま備えになります。

体を整える「日常の食生活」


健康な体づくりは、災害時に命を守る基盤です。日頃から次のような食生活を意識しましょう:

◇バランスの良い食事
主食、主菜、副菜を揃え、栄養バランスを意識した食事を心がける。
主食:白米だけでなく、雑穀や玄米を取り入れると食物繊維やビタミンが摂取できる。
主菜:魚や鶏肉など脂肪分が少なく高タンパクな食品を選ぶ。
副菜:旬の野菜を中心に、1日3種類以上の野菜を摂取する。

◇発酵食品を取り入れる
味噌や納豆、ヨーグルトなどの発酵食品は、腸内環境を整え免疫力を高める効果があります。

◇水分補給を習慣化
日頃からこまめに水分を摂取し、災害時の脱水症状を防ぐ。
ペットボトル水をストックしておきましょう。

◇災害食のローリングストック
普段の食事で使う缶詰やレトルト食品を多めに買い、定期的に消費しながら補充する。
これにより、非常時も普段通りの食事が可能になります。

例:レトルトカレー、ツナ缶、乾燥野菜、フリーズドライ味噌汁など。

2. 生活習慣病のリスクを減らす



災害時に持病が悪化することを防ぐため、日頃から健康管理を徹底することが大切です。
適度な運動や定期的な健康チェックを習慣化しましょう。

持病や体調管理の徹底

災害時には医療機関の利用が難しくなる場合があります。日常的に健康管理を行い、持病が悪化しないように備えましょう。

◇定期的な健康チェック
持病を持つ方は、医師との相談を通じて適切な治療を受け、症状を安定させておく。
◇薬のストックを確保
処方薬や市販薬は余裕を持ってストックしておく。最低1週間分を目安に備える。
◇健康を支える習慣
睡眠を十分に取る(6~8時間)。
適度な運動を心がける(週3回、30分程度のウォーキングがおすすめ)。

3. 災害時のストレスに備える心のケア

被災生活は肉体的だけでなく精神的にも大きな負担がかかります。
普段からストレスをためない生活を心がけるとともに、家族や地域のつながりを大切にしましょう。

心の備え:ストレスと孤独に対処する

災害時の精神的な負担を軽減するためには、普段から心の健康を整える習慣を持つことが重要です。

◇家族や地域とのつながりを大切にする
日頃から近所の人や友人、家族とコミュニケーションを取り、支え合える関係を築きましょう。
◇リラックスできる時間を設ける
ヨガや瞑想、趣味の時間を日常生活に取り入れ、心の余裕を保つ。
◇情報を整理し備える
正確な防災情報や避難経路を家族で共有しておく。災害時の行動を事前にシミュレーションすることで、
心理的な負担が軽減されます。

4. 災害時の生活環境を整える

災害時に快適な生活を送るための備えも欠かせません。

非常用持ち出し袋の準備
要最低限の防災グッズを詰めた非常用持ち出し袋を、家族全員分準備しましょう。
以下は具体例です:
◇飲料水(1人1日3リットルを目安に3日分)
◇食料(エネルギーバー、乾パン、レトルト食品など)
◇常備薬と医療キット
◇携帯用トイレとティッシュペーパー
◇スマートフォン充電器(手回し式やソーラータイプ)

避難所生活を想定した準備
避難所での生活に必要な物を用意する:毛布、折りたたみマット、着替え、衛生用品(消毒液、マスク)。

5. 学びと防災意識の向上

知識を持つことで、いざという時に冷静に対応できます。

◇防災セミナーや訓練への参加
地域の防災訓練や講習会に参加し、正しい避難方法や救命措置を学びましょう。
◇防災情報の収集
災害に関する最新情報をSNSや公式アプリで確認し、避難経路や地域のリスクを把握しておきましょう。

 

生き続けるための防災意識を高めよう


災害関連死を防ぐには、「避難する防災」だけでなく、「生き続ける防災」の意識が必要です。
健康な体と心は、非常時にこそその真価を発揮します。

まずは日常の食生活から、体を整えることが一歩目
食べる力は生きる力。今できる備えから、未来の自分と大切な人を守りましょう。

そして日常の備えが未来を守る力になる

災害関連死を防ぐためには、日頃の健康管理や防災意識の向上が不可欠です。
食生活の改善、体調管理、心のケア、防災グッズの準備といった一つひとつの取り組みが、
いざという時に大きな力となります。

「備えあれば憂いなし。」
日常の小さな積み重ねが、自分自身と大切な人の命を守る備えにつながります。
ぜひ、今日から一歩ずつ取り組んでみてください。

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