更年期を快適に過ごすための栄養とライフスタイル

更年期は、閉経を挟む前後5年間、合計約10年間を指します。
閉経の時期には個人差がありますが、平均的な閉経年齢は50歳程度です。
閉経が50歳の場合、45〜55歳あたりが更年期にあたります。

この時期は、女性の生殖機能が徐々に低下し、最終的に閉経を迎える過程にあります。
更年期には多くの身体的および精神的な変化が伴いますが、
食生活とライフスタイルの選択がこれらの症状を管理する上で
重要な役割を果たすことが知られています。

 

更年期における身体的変化

■ホルモン変動
女性ホルモンであるエストロゲンやプロゲステロンの分泌量が低下する時期です。
エストロゲンの分泌量は、18~40歳頃が最も多く、
40歳頃から減り始め、閉経の前後で急激に減少します。

■発汗とホットフラッシュ
更年期障害の代表的な症状のひとつで、突然の体温の上昇や発汗やほてり、
動悸などがあらわれるものです。寒気を感じることがあります。

■睡眠障害
女性ホルモンの急激な減少により睡眠の質が低下し、眠りに入りにくい、
夜中に目が覚める(中途覚醒)、朝方早く目が覚めるなど、
眠りは浅くなりがちです。

■骨密度の低下
更年期になると、女性ホルモン(エストロゲン)が急激に減少するため、
骨を吸収する破骨細胞の働きが暴走します。
壊すスピードが速くなるため、
骨の量がどんどん減少してしまいます。
骨の減少スピードが速ければ、骨粗鬆症となります。

■心血管疾患のリスク増加
更年期や閉経が近い女性の心臓病の発症率は上がる傾向があります。
エストロゲン(女性ホルモン)には、血管を広げる作用やコレステロールの代謝を改善する作用、
抗酸化作用など、さまざまな心臓・血管に対する保護作用があります。
閉経によってエストロゲンが減少し、この作用が薄れることで
心臓病の発症率が上がってしまうのです。

更年期における精神的変化

■気分の変動
ホルモンの変動は気分の波や不安、イライラや抑うつを引き起こすことがあります。
症状は個人差が大きく、環境の変化などの影響を受けやすいです。

■集中力の低下
卵巣から出せるエストロゲンの量や、視床下部からの指令のバランスが崩れることで、
自律神経が影響を受けます。 そのため更年期にさしかかると女性ホルモンの乱高下にともない、
集中力や判断力が低下するという症状があらわれます。

■自己イメージの変化
身体的変化により自己評価が低下することがあります。

 

食生活が更年期の症状に与える影響

良い影響

■高品質なタンパク質、ビタミン、ミネラルが豊富な食事は、
身体の修復とメンテナンスに役立ち、エネルギーレベルを高めることができます。

■カルシウムとビタミンDが豊富な食事は、骨密度の低下を防ぎ、
骨粗しょう症のリスクを減少させます。

■オメガ3脂肪酸を豊富に含む食品(例:魚油)は、
心血管疾患のリスクを減少させる可能性があります。

悪い影響

■高脂肪、高糖分、加工食品は、体重増加、炎症、ホットフラッシュの悪化など、
更年期の症状を悪化させる可能性があります。

■カフェインやアルコールの過剰摂取は、睡眠の質を低下させ、
気分の波を増加させる可能性があります。

 

更年期サポートのための栄養素

更年期は、女性の生涯における自然な過渡期であり、様々な身体的および精神的な影響が出てきます。

この時期、女性の体はエストロゲンとプロゲステロンのような主要なホルモンの生産が減少し、
これが一連の症状を引き起こします。適切な栄養素を摂取することで、
これらの症状を和らげ、更年期をサポートすることができます。
特に更年期に必要な栄養素は女性の健康と美にとても重要です。

 

カルシウム

骨の健康を支えるうえで必要なミネラル(無機質)はカルシウムとマグネシウムとリンです。
エストロゲンの低下は骨密度の減少を引き起こし、骨粗しょう症のリスクを高めます。
エストロゲンが分泌されている閉経前は古くなった骨を壊す(破骨細胞)働きと、新しい骨を作る(骨芽細胞)働き
がバランスよく保たれています。

しかし閉経以降、エストロゲンが減少すると骨をつくるバランスが崩れます。
そのため新しい骨をつくるスピードが追い付かず骨がスカスカの状態になりやすくなります。
また腸管でのカルシウムの吸収が悪くなることも。

ただしカルシウムだけを摂取してもは骨の強化にはつながりません。
骨の材料であるマグネシウムやリンとの比率が重要です。

カルシウムを摂取しても、加工食品に含まれる添加物によるリンの摂取が増えると
カルシウムとリンのバランスが崩れます。
そうすると血液中にカルシウムが放出されるため、骨のカルシウム量が減少します。

■理想の比率
カルシウム:リン=1:1~2
※加工食品や~の素、練り製品、ドレッシングなどにリンは使用されています。
原材料表示では”リン”と記載されていません。また商品によってリンの使用量は異なります。

■カルシウムを多く含む食品
カルシウムの吸収率は約20~50%です。
吸収率は食品によりことなるだけでなく、同時に摂取する食品成分によっても変動します。

食品名 摂取量 カルシウム含有量
牛乳 コップ1杯(200ml) 220mg
ヨーグルト 1パック(100g) 120mg
小松菜 1/4束(70g) 119mg
切り干し大根 15g 81mg
水菜 1/4束(50g) 105mg
桜エビ 大さじ1杯(5g) 100mg
木綿豆腐 1/2丁(150g) 180mg
納豆 1パック(50g) 45mg
厚揚げ 1/2枚(100g) 240mg

■カルシウムの吸収を阻害
・タンニン:緑茶、コーヒー、紅茶
・フィチン酸:玄米、豆類
・シュウ酸:たけのこやほうれん草の灰汁
※上記3るは不溶性のカルシウム複合体を作り吸収を阻害
・多量の脂質:飽和脂肪酸(肉の脂肪、ココナッツオイル、マーガリン、ショートニングなど常温で固体の脂)と
カルシウムが石けんとなり、吸収を阻害
・多量のリン:腸管におけるカルシウムの吸収を阻害する

マグネシウム

 骨や歯に必要な栄養素。300種類以上の酵素を活性化し、筋肉の収縮や体温、血圧の調整も行います。
マグネシウム不足になると、骨の形成への影響のほか、高血圧や虚血性心疾患、神経過敏、抑うつ感など
様々な影響をきたします。

マグネシウム不足の原因は
1)和食中心の食生活から欧米化したことでマグネシウムを多く含む食品の摂取の減少
2)加工食品の利用増加、精製された食品の増加
3)ストレス、アルコール方によりマグネシウムの消費アップ
また糖質制限により、穀物の摂取も減ったことなど、日々の食生活の変化があげられます。

■理想の比率
カルシウム:マグネシウム=2:1

■マグネシウムを多く含む食品

まごわやさしい(語呂合わせで覚えやすいです)
「ま」=まめ類:大豆、小豆、豆腐、納豆
「ご」=種実類:ごま、アーモンド、栗、ぎんなん
「わ」=海藻類:わかめ、ひじき、のり
「や」=野菜類:人参、ホウレン草、白菜、キュウリ
「さ」=魚:カツオ、さんま、貝類、エビ
「し」=キノコ類:しいたけ、しめじ、エリンギ、まいたけ
「い」=イモ類:じゃがいも、里芋、山芋、さつまいも

※具沢山みそ汁に入れるとマグネシウムは摂取しやすくなります。

亜鉛

更年期の女性にとって亜鉛は特に重要なミネラルです。更年期はホルモンバランスの変化により体の抵抗力が低下しやすくなるため、亜鉛が免疫機能をサポートし感染症に対して必要です。
また亜鉛は性ホルモンの合成と代謝に関与しており、エストロゲンとプロゲステロンのバランスを維持するのに
役立ちます。更年期にはこれらのホルモンのレベルが変動するため、亜鉛が特に重要になります。

そのほか骨や心血管系、肌、髪、爪の健康にも欠かせません。
さらに亜鉛は神経伝達物質の合成と機能に関与しており、気分の安定に貢献することができます。
更年期には気分変動が見られることがあり、亜鉛がこの時期の気分の安定に大切です。

■亜鉛を多く含む食品

かき(牡蠣) 5粒(60g) 7.9mg
ほたて 3個(60g) 1.6mg
牛もも肉 1食分(70g) 2.8mg
鶏もも肉 1食分(70g) 1.6mg
豚ロース 1食分(70g) 1.1mg
1個(50g) 0.7mg
納豆 1パック(40g) 0.8mg
木綿豆腐 半丁(150g) 0.9mg
アーモンド 10粒(15g) 0.7mg
ご飯 お茶碗1杯(150g) 0.9mg

ビタミンD

ビタミンDは、カルシウムの吸収を高め、骨の健康を丈夫にし、筋力も高めてくれます。
食品からの摂取以外にも、日光(紫外線)に当たることで皮膚でも生成されます。
1日10分適度に歩き、日光に当たると骨粗しょう症の予防になります。
特に冬場は寒く外出頻度が減ったり、日照時間が短いため、ビタミンDの
生成が減ります。意識して日光に当たるようにしましょう。

■ビタミンDを多く含む食品
・魚介類
・キノコ類

 

オメガ3脂肪酸

オメガ3脂肪酸は、心臓病のリスクを減少させる働きがあります。
また抗炎症作用を持ち、ホットフラッシュの重症度を軽減することもあるため、
更年期の女性には必要です。
さらに、オメガ3は気分の改善や認知機能のサポートにも役立つ可能性があります。

 

これらの栄養素を含む食品を日常的に取り入れることで、更年期のサポートにつながります。

更年期を迎える女性は、これらの栄養素を意識的に取り入れることで、
身体的および精神的な健康をサポートしてくれるので
日々の食生活を工夫してみましょう。

 

 

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