一時的なデトックス?ファスティングの危険性
「ファスティング(断食)」は、一定期間食事を断つことで
体内のデトックス効果やダイエット効果を期待する方法です。
短期間のファスティングを取り入れる人も増え、特に健康意識の高い層で注目されています。
しかし結論から言うと、ファスティング(断食)では基本的にほとんど痩せません。
数日間食べなかったりジュースやスープだけで過ごせば一時的に体重は軽くなるでしょう。
でもそれを「痩せた!」と喜ぶのはちょっと待って欲しい。
なぜならファスティングは決してどんな方にも万能ではなく、
むしろやり方を間違えると体に大きな負担をかけ健康を損なうリスクがあるからです。
ファスティングで減るのは脂肪ではない
まず知って欲しい体のメカニズムで大切なのは短期間の断食で
脂肪が大幅に減ることは物理的に不可能 という点です。
実は体重が減ったとしてもそれが「脂肪が減った」ことを意味するわけではありません。
なぜなら脂肪を1kg減らすのに7200kcal消費が必要だからです。
そもそも体重とは次の3つの合計です。
- 筋肉・骨・体脂肪(体を構成する成分)
- 水分
- 体内にある食べ物(胃腸内を移動しているもの)
ファスティングで減るのはこのうち 「水分」と「体内の食べ物」 によるものが大半を占めています。
ではもう少し詳しくみていきましょう。
なぜ体重が減るのか?そのカラクリ
① 胃腸内が空になる
ファスティング中は食事を摂らないので当然ながら胃腸の中は空っぽになります。
一般的な食事の重さは 1食あたり約800g(水分を含む) と言われているため、
単純に食事を抜くとその分体重は減ります。
でもこれは、食べていないだけで痩せたわけではない のです。
また、排便のタイミングによっても 1〜2kg程度の変動 は普通に起こります。
② グリコーゲンと水分が抜ける
ファスティングで摂取カロリーが減るとまず筋肉や肝臓に貯蔵されている
「グリコーゲン」(エネルギー源)が使われます。
個人差はありますが体内には約400gのグリコーゲン が蓄えられています。
そしてグリコーゲンは水と結びついて 約4倍の重さ で体内に貯蔵されているため、
これが消費されると 1.5〜2kgの体重減少 につながるのです。
ファスティング後のリバウンドはなぜ起こる?
「体重が減った!」と喜んで食事を戻すと、すぐに元通りになって気持ちが沈んでしまいがちですよね。
ファスティングで減ったのは 「胃腸内の食べ物」と「グリコーゲン+水分」
再び食事をすれば、胃腸内の食べ物と水分が元に戻るので体重も戻るのは当然。
つまり、ファスティングで減る体重の大半は「水分」であり、脂肪が減ったわけではないのです。
本当に痩せるために必要な食事のポイント
もし、「見た目を変えたい」「脂肪を減らしたい」と思うなら、
一時的に体重を減らすのではなく、筋肉を維持しながら脂肪を燃やす方法 を選ぶ方法が大切です。
ファスティングで得られるものは「一時的な体重の減少」だけ。本当に痩せたいなら無理な食事制限よりも、長期的に続けられる食事と運動習慣を考えるのがベスト です。
そして最も知られていないのが自分で自分の胃腸の機能を落としてしまっている点です。
ファスティングで胃腸が弱る?「痩せたかも」の落とし穴
「ファスティングで胃腸を休める」と聞くと、なんだか体に良さそうに思えますよね。
でも、実は胃腸を動かさないので逆に機能が衰えてしまう可能性があるのです。
断食・ファスティングが胃腸の筋肉を弱める理由
私たちの胃や腸は「筋肉」でできています。そして、この筋肉は 自分の意思では動かせない「不随意筋」 です。
つまり、固形物を食べると自然と動き、鍛えられている のです。
筋肉は使わなければ弱くなるもの。
普段、意識せずに鍛えられている胃腸も食事を抜くことで一気に機能が落ちてしまうのです。
そして「食べる量が減った!」は要注意サイン

Woman’s feet on bathroom scale. Diet concept
ファスティング後に「以前より食べる量が減った」
「少しの量で満足できるようになった」と感じてませんか?
これを「胃が小さくなった!」と喜ぶ人もいますが
実は 胃腸の機能が低下してしっかり食べられなくなっている 可能性が高いのです。
本来、胃腸は食べ物をしっかり消化・吸収し体に必要なエネルギーを送る役割を担っています。
それが弱ってしまうと少しの食事でお腹がいっぱいになったり
消化不良を起こしやすくなってしまいます。
「痩せた」と思っていたら実は 栄養不足になりやすい体を
作ってしまっている かもしれません。
さらにこのようなリスクも潜んでいます。
① 筋肉量の低下による基礎代謝の低下
ファスティング中は、体に必要なエネルギーが不足します。
最初は脂肪をエネルギー源として使いますが、長期間になると筋肉を分解してエネルギーを作ろうとするため、
筋肉量が減少します。
筋肉が減ると基礎代謝が低下し、ファスティング後の食事で太りやすくなるという悪循環に陥ります。
特に、もともと筋肉量が少ない女性や年齢とともに筋肉が減りやすい人には、
デメリットが大きい方法です。
② 血糖値の乱高下で体調不良に
ファスティングが終わった後、急に食事を摂ると血糖値が急上昇し、
体がエネルギーを吸収しすぎることがあります。
これにより、以下のような症状が起こることがあります。
- 頭痛
- めまい
- だるさ
- 食後の異常な眠気
ファスティングをすることで「胃腸を休める」と言われることもありますが、
極端な断食は逆に胃腸をびっくりさせ、消化吸収の機能を乱すことになりかねません。
③ 自律神経の乱れとホルモンバランスへの影響
ファスティングは食事のリズムを大きく変えるため、自律神経のバランスが乱れやすくなります。
特に、自律神経が乱れると女性はホルモンバランスが崩れやすくなることが報告されています。
例えば、極端な食事制限によって生理不順や肌荒れ、冷え性が悪化するケースもあります。
さらに、ストレスホルモンであるコルチゾールが増え、精神的な不安定さやイライラが増すこともあります。
「食べない」やり方で健康になるのではなく、
「適切に食べる」て健康につながるという点を忘れてはいけません。
リバウンドしやすい?ファスティング後の落とし穴
ファスティングを経験したことがある人の中には、
「最初は体重が減ったのに、すぐにリバウンドした」という人が多いのではないでしょうか?
実は、ファスティングは一時的に体重が減るものの、
長期的に見るとリバウンドしやすいダイエット法です。
その理由を詳しく見ていきましょう。
① 体が飢餓モードに入ると、次の食事で脂肪を蓄えやすくなる
ファスティングをすると体は「飢餓状態になった」と判断します。
そうすると次に食事をしたときに、できるだけエネルギーを蓄えようとします。
つまりファスティング後の食事は脂肪として体に蓄積されやすいのです。
せっかく体重が減っても、普通の食事に戻すとすぐに体重が戻るだけでなく以前よりも
太りやすくなってしまう可能性があります。
② 「食欲爆発」で食べ過ぎる危険性
ファスティングを終えた直後、多くの人が経験するのが「食欲爆発」です。
長時間空腹が続くと食べ物に対する欲求が強くなり、つい食べ過ぎてしまいます。
特に糖質や脂質が多い食べ物を欲しやすくなるため
「断食したのに終わったら暴食してしまった」という結果になりがちです。
③ 長期間のファスティングで腸内環境が悪化する

「ファスティングをすると腸がきれいになる」と言われることがありますが
長期間のファスティングは逆に腸内環境を乱す原因になることがあります。
腸内の善玉菌は、私たちが食べた食べ物をエサにして増殖します。
しかしファスティングで食べる量が極端に減ると腸内細菌のバランスが崩れ、
以下のような症状が出ることがあります。
- 便秘または下痢
- お腹の張り
- 免疫力の低下
特に日常的に発酵食品や食物繊維が豊富な食事を摂っている人にとって、
ファスティングはかえって腸内の働きを弱めてしまいます。
結論:ファスティングは短期的には効果があるが、長期的にはリスクが大きい
ファスティングは一時的に体重を落としたり、胃腸を休めたりする目的では役立つこともあります。
しかし続けることのデメリットが多く、リバウンドしやすいという欠点があります。
特にお米と味噌汁を基本にした食生活を続けている人にとって、
ファスティングはリズムを崩しかえって体調を悪くする可能性が高いのです。
大切なのは「食べない」のではなく「適切に食べる」こと。
普段からお米を中心としたバランスの良い食事を心がけていれば極端なファスティングをする必要はありません。
むしろ継続的に体調を整えるために、日々の食事を大切にすることが一番の健康法と言えます。